Kathmandu Valley (03/09/03-14, 03/12/10-17, 04/04/29-05/13)

ネパールのカトマンドゥ渓谷(Kathmandu Valley Map)は、数ある世界遺産の中でも、自分が最も数多くの場所を訪れ、深く立ち入った世界遺産です。撮った写真も非常に多く、選ぶのに困りましたが、ここではその一部を紹介します。

A bird's-eye view

中東経由・中国経由で3度カトマンドゥを訪れましたが、カトマンドゥ盆地上空に立ち込める状態でした。カトマンドゥ盆地の標高は1,300mほどで、周りの山々は2,000〜3,000mほどとかなり差があるので、飛行機はいつも、雲を抜けて、一気に降下していく。そのため、いつも着陸のときは、雲を抜けたらいきなり山だったりしないかとハラハラする。実際のところ、事故も多いそうだ。


カトマンドゥ盆地には数多くの世界遺産が散らばっていおり、チベット仏教やヒンドゥ教など、様々な宗教の影響を受けた多様な建築物が含まれている。その中には、チベット仏教の仏塔(ストゥーパ)として、スワヤンブナート、ボダナートという二つの巨大な仏塔が含まれているが、こちらはスワヤンブナートの方。カトマンドゥ市街地からはやや西に離れ、外国人の集まるタメル地区からは歩いて行ける。仏塔までの道は急な登りで、その脇道にはこのような仏像が散らばっている。

スワヤンブナートへの道

スワヤンブナート

急登を登っていくと、釈迦の目を持つ仏塔が門から顔を覗かせる。この眺めは、カトマンドゥでも最も印象的なものの一つだろう。ここまで登ってくるのに既にヘトヘトなのに、最後に登りが一番きついとなると、さらに気が滅入る。しかし、ここを登り切ると、外と雰囲気の異なる静かな空間が広がっているので、登らないわけには行かない。そこで、一息脇道で休憩して登るわけだ。ちなみに、左側に料金所があり、外国人はお金を取られるが、後ろからアプローチするとお金は取られない。


これはマニ車と呼ばれるもので、それぞれデヴァーナガリ文字でお経が書かれており、一回まわすとお経を読んだことになる。回すとガラガラ音がするので、時計回りに回して周るのが楽しい。ここには、仏塔以外にもいろいろなところがあり、裏手に回ると野生の猿が沢山いて微笑ましかったり、Didi's Tea Room など、チベット女性のカフェもあったりして、のんびりできる。しかしなんと言っても印象的なのは、流れている音楽。仏教音楽なのだが、低音の短調なリズムがこの空間と完璧にマッチしており、記憶に残る。

スワヤンブナート:マニ車

サモサ

カトマンドゥの街を歩いていると、色々な食べ物が売られているが、これはその中でも最もよく見るものの一つで、「サモサ」という食べ物。油で揚げたパンの中に、辛くない豆のカレーが入っていて、ネパール風カレーパンといったところか。これに、甘辛いスープをかけて食べるのがおいしい。一つわずか5ルピーだけれど、満足感がある。店によって味が違うので、食べ比べてみるべし。この他にもロティと呼ばれる揚げパンなども売っている。


カトマンドゥ盆地の3つの旧王国、カトマンドゥ、パタン、バクタプールは、それぞれに(旧)王宮広場(ダルバール広場)があり、世界遺産に指定されている。中でもラリトプル(美の都)の異名のあるパタンのダルバール広場は、ネパール風とインド風など様々な文化の影響を受けた建築が調和しており、素晴らしいのだが、それは後でみることとして、これはカトマンドゥのダルバール広場より、「ハヌマン・ドゥカ」の像。

ハヌマン・ドゥカ

ボダナート

もう一つの仏塔、ボダナート。スワヤンブナートと違い、東の郊外の街中にあるストゥーパは、ネパールでも最大のもので、周りの家にかけられた旗が印象的。こちらの仏塔は、上の方まで登れるため、上に登って周りを見るのものんびりする。実際そういうネパール人も多く見かける。ここはとくに、チベット系の難民の人たちが多く住む区画でもあり、ボダナートの周りはそのままチベット土産のお店が立ち並んでいる。


ここからはカトマンドゥをしばらく離れることにして、バクタプールのダルバール広場より、ゴールデン・ゲート。この広場は、建築物のバリエーションが他の二つの広場より激しく、インド系、ネパール系、中国系の建築様式とそれぞれと仏教・ヒンドゥ教の取り合わせて多様な建築物が立ち並ぶ。しかし、やはりネパール式の建築物が一番落ち着きがあり、好みだ。屋根を土で固めており、屋根から生えた草が印象的だった。この街はちなみに、ヨーグルト(ダヒ)が有名で、ズズ・ダヒ(王様のヨーグルト)と呼ばれるほどまろやかな味わい。実際、ヨーグルトのとろける舌触りと上品な甘みとが素晴らしい。

バクタプール

チャング・ナラヤン村

バクタプールから、さらに場所を離れてここはチャング・ナラヤン。寺院を中心とした、小さな村だ。写真で中心にぴょこと飛び出しているのがナラヤン寺院。こういう風に、重層的に丘に築かれた街は好みだ。


ナラヤン寺院では、ネワール様式の精緻な彫刻が見事だ壁や柱、至る所に細かい彫刻が見てとれる。中でも一番見事なのは、梁の部分にかかる仏像の彫刻だろう。シヴァやガネーシャなど、代表的な神々の彫刻は、どれもがじっくりと眺めたくなるほど細かく作られている。ドアの周りの細かい文様など、綺麗だ。恵比寿のネパール料理レストラン・クンビラのゴッド・ルームではこのネワール様式の細工が見られる。

チャング・ナラヤン寺院

パタン:ゴールデン・テンプル

次に、ラリトプル(パタン)に移る。ラリトプルは、建築物・細工の精緻さにおいて、他の追随を許さない、ネワール族が住む街で、街の佇まいも趣がある。ここはゴールデン・テンプルと呼ばれるダルバール広場近くのお寺で、この屋根の上から垂れ下がる蛇が、涅槃まで連れて行ってくれるのだそう。寺の内部は入ることができないが、鼠が走り回っていたりして、賑やかな感じだった。


パタンのダルバール広場の脇に、簡単な水浴び場があって子供たちが水浴びをしている。ネパールでは本当に色々な子供たちを見た。親につれられた子供たちもいれば、バスで乗客からお金を回収する子供や、ポスターを売る子供、料理をする子供。共通していたのはみな笑顔があったことだ。そういう場面に出会うと、考えさせられることも沢山あったが、子供たちが元気に笑っているところを見ていると、なんとなくほっとした。

パタン:水浴びする子供たち

パタン:ダルバール広場

パタンのダルバール広場は本当に美しい。絵になる広場だ。それはやはり、中心にある煉瓦造りの赤いこの建物と、比較的状態良く保存された建築物とが見事に調和しているからだと思う。ダルバール広場の中では、このパタンの広場が一番好きだ。興味を持った人は実際に行って見て比べて欲しいと思う。そこには、文化の坩堝(るつぼ)であるネパールを見事に体現した空間がある。


最後に、カトマンドゥのヒンドゥ教的側面についてみていく。ネパールはヒンドゥ教を国教とする世界で唯一の国で、人口の80%以上はヒンドゥ教である。カトマンドゥには、母なる川ガンジスに通じる、聖河パグマティ川を挟んで、ヒンドゥ教の最大の寺院、パシュパティナートがある。ここで垣間見れるヒンドゥ教徒の死生観は彼らの生活の中でも最も注目するべき独特性を持っている。ここは、川から少し登った寺院の辺り。写真には牛が写っているが、最近はカトマンドゥの牛の数も昔に比べてずっと減ったそうだ。

パシュパティナート:牛と寺院

パシュパティナート:サドゥ

ヒンドゥ教のサドゥー(修行者)の方に写真を撮らせてもらった。何十年も伸ばした髪が修行の長さを物語る。なかなか陽気な方で、ポーズまでとってくれた。


このパシュパティナートには、火葬ガートがあり、人は死ぬと、ここで焼かれ、灰となり、川に流される。パシュパティナートには何度も来たが、いつも誰かが焼かれていた。人が焼かれる匂いというのは、あまりいいものではない。ここに来ると、いつでも、死ぬということに向き合わざるを得ない。そのことについて、深く考え始めるけれど、宗教を持たない日本人の自分は、すぐに思考が停止して、ただ、川辺で焼かれる人たちをじっと見ていることになる。

パシュパティナート:火葬ガート

パシュパティナート近くの民家

パシュパティナート近くの民家。カトマンドゥと言えば、やはりこの赤レンガの建物がその象徴だ。このやや暗い空や、緑の野に、赤レンガは映える。この空と、この家々がまさにカトマンドゥと呼べる風景だと思う。

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